
コンテナ物語
まさか、ただの箱が世界を激変させるほどの威力を持った大発明だったとは、本書を読むまで気付きもしなかったよ…。
日常生活圏内では、あまり目にすることはないけれども、現代の物流といえばコンテナに決まっている。が、コンテナが登場するのは 1956年のことで、それまで沖仲仕の活躍の場だった港の労働環境を急激に激変させることになる。
コンテナ登場以降、世界各地の港で労働闘争が起こり、コンテナの規格争いが起こり、海運事業者の連合化や統廃合が起こったり、陸運まで巻き込んだ輸送に関する法改正が起こったり…して、現在に至る。
労働集約型から機械化、自動化へシフトし、巨大船で大量に荷物を送れるようになり、輸送コストが劇的に下がった結果、安いところで作って、高いところで売るってのが、地球規模で行われるようになった訳だ。コンテナ登場以前では、運賃が高過ぎて起こり得なかったこの大変化は、専門家はもちろん、発案者ですらも予想していないものだった…という話。
この物語、けしてコンテナだけのものでない。職業柄、もっとも危機を感じるのは、今まさに起こっているクラウドコンピューティングの波だ。一般的なところでは、音楽、書籍、映像の流通が既に変わってしまっているけど、システム開発という仕事も大きく姿を変えることになりそうだ。
"愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ" ぢゃないけれど、過去のできごとを本書で読んで、しっかりと未来の舵取りを考えることをオススメしたい。