
誰が音楽をタダにした?
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この本、めっちゃおもしろい!
レコードやカセットテープの時代に生まれ育ち、 iTunes や YouTube で音楽を聴くのが日常になっている現代まで、機器や著作権侵害騒ぎの遍歴を見てきた身としては、その裏側や海の向こうの出来事を綴った本書が実に興味深く、あっと言う間に読み終わってしまった。
事実を綴ったドキュメンタリーなのだが、物語がよくできているためか、映画化が決定しているそうな。
本書は、大きく三つのストーリーが並行して進む群像劇になっている。 mp3 を開発した研究者の立場、巨大レーベルの CEO、そして発売前の音源を手に入れて共有しているアンダーグラウンドな世界。 CD が市場に出て以降の時代を、それぞれの視点から見ることができるって訳だ。特に、一般市民があまり知ることのできないアンダーグラウンドを詳細に綴っているのは、資料的にも価値が高いと思うし、何よりスリリングな展開で、いい塩梅に本書に彩りをもたらしている。そして、彼らが極悪人ではなく、いたずらっ子に近い普通の人たちだと言うことで親近感すらわく。規模は違えど、似たようなことをやってた (る?) 人たちは少なくないと思うし…。
本書に登場するのが、洋楽や外人アーティストばかりで私はあまりわからないのだけど、ジャスティン・ビーバーやテイラー・スウィフト、レディーガガと、私でも知っている有名人の名前も登場し、この本に書かれていることが現代のできことであること、ここ四半世紀ぐらいの劇的な遍歴を綴っているのだと言うことがよく分かる。振り返って見ると、ものすごいスピードで時代は変化しているなぁ〜と改めて実感し、ラジオのエアチェックから始まったパーソナルミュージックコレクションのことをとても懐かしく思い出した…。 ^^;
綺麗事ばかりではなく、違法だったり、グレーゾーンだったりすることも含めて、時代は移り変わる。途中でいろんな軋轢も生まれたのだろうけど、それらはきっと変化するために必要不可欠だったと思う。主役を引き立てる名脇役的な…。
これからも時代は移り変わってゆく訳だけど、もし、現代の音楽環境のメリットを存分に享受している立場にいるなら…。これまで挑戦してきた人たちに賛辞を、これから挑戦する人たちに寛容を。それはきっと幸せな世界を築くために必要な通過点だから。