
博士の愛した数式
日本映画らしいリズムと映像美で描かれているのは、失われつつある日本人の美意識なのかもしれない。
心地よいリズム。繊細な映像美。そして、記憶力を失った数学博士を通して見る、人として大切な美意識。名作である原作への尊敬の念を感じる。
だがしかし…。きっと、原作を読んでいなければ、この映画の評価は高いはずだ。原作が良すぎたか…。
蜃気楼風の映像なのに長袖を来てる深津絵里のシーンや、家政婦の息子である ルート の回顧録として描かれているのに ルート が知らないはずのシーン (家政婦をクビになるとか) がかなりあったり (原作では家政婦の一人称視点だったので、それを描こうとすると…ね) …と、本筋ではないところが気になってしまう。エンディングシーンで登場する名言は、数学者のものではないし… (この物語の設定からすると、話題に登場するのは数学者か野球選手が相応しいと思う)。撮影上の都合だったり、原作を読んだ人にも楽しめるようにという配慮だったり…でアレンジを加えているのだと思うが、原作を超えることは難しいのだろう。
博士らしい味わいの寺尾聡、実直で前向きな明るい母親を演じる深津絵里。日本映画らしい繊細な映像。原作の記憶が薄れた頃なら、心温まる名作と思える気がする。80 分で記憶が消えたりはしないので… 80 日後ぐらいがいい感じかもしれない。
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