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エリジウム

マット・デイモン主演の SF アクション映画。

アパルトヘイト問題をベースに SF 映画 第 9 地区 を撮った監督が、格差社会を SF に仕立てたのが本作のようだ。

いくつになっても素敵なままのジョディ・フォスターが出演している本作品は、アニメ好きな監督の好みを反映した、メカやアクションが目白押しの、痛快 SF アクションになっている。だがしかし…これは格差社会を皮肉った作品で…。

スペースコロニー "エリジウム" は、完全にコントロールされた富裕層のための居住区になっている。快適な居住空間が整備されているが、この映画でキーとなる重要な設備は、どんな怪我や病も数分で治療できてしまうカプセルがどの家にも完備されていることだ。一方の地球は貧困層の居住区となっていて、登場するのは労働者層とアウトローだけ。"エリジウム" ほどの高度な医療は存在せず、重篤な怪我や治療できない病に冒された人々は、医療カプセルを求めて "エリジウム" へ行こうとする。公式なルートは描かれていないが、おそらく富裕層でなければその費用を負担できないぐらい高額なのだろう。渡航費を負担できない地球に住む人たちは、大けがをしたり、死の病に冒されたりすると、違法なルートを使って "エリジウム" への侵入を試みようとするが、事はそう簡単ではなく…。そんな社会の中で、工場労働者のマックス (マット・デイモン) は、仕事で事故に合ってしまい、余命五日を宣告される。生き残るためには "エリジウム" へ行くしか選択肢のなくなったマックスは、裏社会の仕事と引き換えに、"エリジウム" への切符を手に入れようとする。

…と言う訳で、格差社会の中でも特に医療格差にフォーカスが当たっているのが本作品。世界最高の医療技術を持つアメリカでは、富裕層だけがその恩恵にあずかれる。その一方で、保険に入ることができずに医療費を払えない貧困層が受けられる治療は限定的。そのあたりの社会問題を単純化して、 SF アクションに仕上げたのが本作品という訳だ。公開されたのが、 2013 年とオバマケアの動向が話題になっていた頃のことだしね。

最後は、一応、ハッピーエンドということになる。まあ、SF アクション映画のエンディングとしては痛快でいいのだが、社会問題の答えとしてエンディングを観ると、「それは違うだろう…」と思ってしまう。短期的にはいいのだけれど、その社会構造を長期的に維持することはできないぞ、と。

しかしまあ、その前に…。

そもそも富裕層がスペースコロニーに住むというのはどーも納得できない。最初に新しい土地 (?) を目指すのは、既得権益の少ない貧困層だからだ。初期のアメリカ移住では、夢を求めて新天地アメリカへ飛び出したのは、ヨーロッパでの暮らしが不自由だった人たち。それを踏まえると、スペースコロニーに集まるのは、そこに建てられた工場の高額賃金を当てにした貧困層の人たち、というのが納得感の高い設定だろう。